遺言書を取り消したい
遺言書の取り消し(撤回)・変更について
「遺言書」は、ご自身の財産を譲り渡すことについて、「誰に」「何を」「どれくらい」といったご希望を記載した法的な書類です。
遺言者は遺言者が死亡したときに効力が発生します。そのため遺言書を作成しても時間の経過などによって気持ちが変わりこともあります。そこで、遺言者が「遺言書自体を取り消したい」「遺言内容を変更したい」と考えた時には、作成済みの遺言書であっても全文および一部を撤回・変更することが可能になっています。
遺言書の撤回(取り消し)をしたい場合
遺言書には主に使用される普通方式で以下3つの種類があります。
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言
・公正証書遺言
それぞれ撤回(取り消し)する方法について、1つずつ解説します。
自筆証書遺言の撤回(取り消し)方法
自筆証書遺言は、遺言者が自筆で作成する遺言書のこといいます。近年の法改正により、財産目録などの1部についてはワープロを利用することができるようになりました。また、作成した遺言書を法務局に預けることができるようになり、利便性が高まってきています。
この自筆証書遺言も、前述したように作成した後に撤回(取り消し)することができます。
撤回(取り消し)の方法は、遺言書を作成して行うことになっています。
遺言書の内容として「〇年〇月〇日付け作成の自筆証書遺言を撤回する」と記載します。
遺言書の方式は問わないとされていますので、自筆証書遺言を撤回(取り消し)する遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言いずれの方式でも大丈夫です。
公正証書遺言の撤回(取り消し)方法
公正証書遺言とは、遺言書を公正証書という形式で作成します。公正証書とは、公証人(公務員だとお考えください)が遺言者の遺言内容を聞き取り文書を作成します。公正証書遺言は、利害関係人等以外の証人2名立ち合いのもとで作成され、遺言書の種類のなかでは最も信頼性が高い方式です。
公正証書遺言も、自筆証書遺言と同じく、一度作成しても撤回(取り消し)することができますし、方法も同じで「〇年〇月〇日付け作成の公正証書遺言を撤回する」と記載します。
公正証書遺言を撤回(取り消し)場合は、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言での撤回をお勧めします。
なぜなら、信頼性の高い公正証書遺言を、それより信頼性の低い自筆証書遺言で撤回(取り消し)するのは、あまり好ましいといえないためです。
秘密証書遺言の撤回(取り消し)方法
秘密証書遺言は、公証人や証人に対して、封印した遺言書を提出して、遺言書の存在は明らかにしながら内容は秘密にして保管してもらえる方式の遺言書です。
秘密証書遺言も、自筆証書遺言や公正証書遺言と同じく撤回(取り消し)できますし、方法も同じです。
遺言書を変更できるのは自筆証書遺言のみ
遺言書の撤回(取り消し)については、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれの形式でも可能ですが、一部の内容だけ変更することができるのは自筆証書遺言のみです。公正証書は、公証人が作成するものですし、秘密証書遺言はそもそも内容を秘密にするものだからです。
一方、自筆証書遺言は、下記の方法により内容の変更ができます。
- 変更したい箇所に二重線を引く
- 二重線を引いた箇所に押印をする
- 変更箇所の横に新しい文言を記載する
- 欄外に「〇行目、〇字削除、〇字加入」と記載、署名する
上記の方法にて内容の変更が可能ですが、変更したい箇所が複数ある場合は、遺言書を新たに作成することをおすすめしております。
なぜなら、遺言書の変更の方法はこのように厳格な方式に従う必要があるため、方式に従っていない変更は遺言書の内容を変更していないものとして扱われるからです。また、遺言書にいろいろ書き込むことで遺言書自体が無効になる可能性もあります。それであれば、遺言書を撤回して新しく作成しておく方が無難だといえます。
遺言の効果が発生した後に遺言は撤回(取り消し)できる?
これまで述べてきた、遺言書の撤回(取り消し)は、遺言者の生前において遺言者が行うことが前提のお話です。
では、遺言者が逝去したあとはどうでしょうか。遺言者が逝去したということは既に遺言書の効力が発生しています。
この場合、撤回というわけではありませんが、遺言の内容が相続人のみを対象とした財産の分け方であれば、相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる財産の分け方を行うことが可能です。
また、遺言者が相続人や受遺者の詐欺、脅迫によって遺言書を作成していたことが分かった場合は、相続人が撤回(取り消し)することができます。
まとめ
相談者の中には、「一度遺言書を作成すると、自分の財産を自由に使えなくなる」と考えている方もおられます。しかし、これまで見てきたように、遺言書はいつでも撤回(取り消し)することができますし、自筆証書遺言では変更することができます。
また、例えば、「長男にA不動産を相続させる」という内容の遺言書を作成していても、生前にA不動産を売却した場合は、その部分については遺言書の効力は失われますが、他の部分について遺言書の効力は残ることになります。
このように、遺言書を作成したとしても作り直すことは何回でも可能です。しかし、遺言書を作成していなければ、財産の分け方は法定相続分に従うことになります。
100点満点の遺言書を作成することはなかなか難しいと考える方も多くおられますが、まずは80点程度のものでもいいから作っておいて、不都合がでたらやり直すという考え大事かと思います。80点のものでも、いわゆる「争続」になるよりかは全然マシだからです。
遺言書を自分は作成した方がよいのか、もう少しあとにした方がいいのかお悩みの方は、当プラザまでお気軽にご相談ください。遺言書作成に精通した専門家が、一人一人のお悩みに応じたアドバイスをさせていただきます。