死後事務委任契約とは?手続きや費用を解説!
人が亡くなると死亡届から始まり、その他にも様々な手続きをする必要が出てきます。
一般的に、これらのお手続きは親族や身近にいる人が行うものですが、独り身の方や頼れる親族がいない方などもいらっしゃいます。
特に、近年、高齢化社会が進む中でこういった方々が増えてきているのが実情です。
そういった方へ向けて、スムーズに死後の手続きをしてもらえるための契約が「死後事務委任契約」です。
今回は、そんな死後事務委任契約について解説します。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、死後の事務手続きについて委任する契約です。遺言書は遺産を誰に渡すのかという内容を定めますが、相続が発生すると、遺産の分け方だけでなく故人の様々は事務手続きが待っています。例えば、葬儀の手配・納骨の手続き・入居していた施設の退去手続き・入院費や公共料金の支払い・携帯電話などの解約手続き・家財道具の処分などの手続きが必要となります。
従来、これらの手続きは配偶者やお子様がしてきましたが、おひとり様や頼れる身内が近くにいない等といった理由から、専門家に依頼するケースが増えてきています。
この専門家に依頼するときに、死後事務委任契約という契約を締結します。
死後事務委任契約はどんな人におすすめ?
先に述べましたように、死後の手続きは、従来は身内が行ってきましたが、今は専門家に依頼するケースが増えてきています。依頼する方は、次のような方が多いです。
①おひとり様
②配偶者も高齢
③子供がいない
④子供が遠くに住んでいる
⑤頼れる友人にお願いしたい
⑥身内に手間をかけたくない
以上のような方からご依頼を受けるケースが多いです。①~④は何となくイメージできると思います。⑤の場合、自分は身内よりも頼りにしていても、死後事務手続きを行うとき、役所など全くの第三者からみれば、その方が本当に頼りにされている方かどうかは不明です。これは専門家が行う場合も同じです。
⑥ですが、残された方にとって、故人の方がどうして欲しかったのか分からないことがあります。例えば、納骨は永代供養がいいのか樹木葬などはどうかなどです。あらかじめ、契約という形で希望を伝えておくことで、残された身内も方はスムーズに手続きを行うことが可能となります。ご本人が亡くなっている以上、本人に意思を確認することができません。そこで死後事務委任契約という契約書が必要になります。
死後事務委任契約と他の制度の違い
いわゆる終活としての法的手続きとして一番有名なのが遺言書です。しかし、遺言書は財産の移転に関する制度で、他の手続きに関してはそれぞれ違う手続きが必要です。よく活用されるのが、財産管理契約・任意後見契約・遺言書・家族信託です。これらの制度と死後事務は何が違うのかをみていきます。
遺言書と死後事務委任契約との違い
どちらも亡くなった後に効力が発生する点については同じです。ただ、遺言書は遺産を誰にどのくらい渡すかを決めるもので、死後事務は財産以外の事務手続きについて効力を発生させるものです。ただ、お金に関する部分と事務手続きに関する部分は重なり合う箇所もあります。たとえば、入居施設への未払代金の支払いです。そのため、遺言書を作成するときは、誰が遺言内容の手続きをするのかを決めておき、死後事務を行う方と矛盾の内容に調整しておく必要があります。遺言内容を進める人は遺言執行者としてあらかじめ指定することができますので、遺言執行者と死後事務委任契約の受任者は同じ人にするか調整できうる関係の人にお願いすることが望ましいといえます。
財産管理・任意後見と死後事務委任契約との違い
財産管理・任意後見は生前のお話です。ともに、生きている方の財産を管理する制度ですが、財産管理は、委任者に判断能力がある状態で行うもので、任意後見は判断能力が低下してから発動する制度です。施設への支払いや、日用品の買い物など、判断能力はあっても体が不自由になることがあります。また、判断能力の低下は突如やってくるものではなく、徐々に低下するものです。そこで、体が元気なうちから、財産管理として徐々に財産の管理をお願いしておき、判断能力が低下してからは任意後見として財産管理をお願いいすることになります。
ここまでご説明してきました、死後事務委任契約はあくまでも死後のお手続きについてのみの委任契約となります。ですから、認知症の発症等によりご自身の判断能力が不十分になった際、事前に決めておいた後見人に財産管理等を依頼する「財産管理」「任意後見契約」も一緒に検討されることが多くなっています。
「財産管理」「任意後見契約」の契約は存命の間のみ有効とされています。
死後事務は、亡くなってから効力が発生します。死後の手続きも生前から管理をお願いしている人にお願いしておくことで、死後の手続きもスムーズに行える関係にあります。
この「財産管理」「任意後見契約」と「死後事務委任契約」を組み合わせることによって、生前から死後まで網羅してもしもの時に備えた対策を行うことができます。ただし、これらの契約はご自身の判断能力が不十分になってしまった場合、契約自体、結べなくなるため元気なうちに検討いただき、ご契約なさってください。
家族信託と死後事務委任契約
家族信託は、生前から死後においても効力を発揮します。亡くなったあとの財産の分配は、遺言書で行うと説明しましたが、家族信託で行うことも可能です。遺言書では誰にいくら渡すかを決めるだけですが、家族信託はどのように財産を使ってもらうのかを指定することができます。たとえば、障がいを持っている子供がいた場合、その子供に遺言書で財産を渡しても、その子供は自分で使うことができません。そこで、子供のために財産を使ってくれる第三者に信託として渡すことができます。また、信託の内容として財産を子供のために使うだけでなく、信託の範囲ないでありますが、子供に必要な事務手続きなどもお願いすることができます(子供の保護に関しては後見制度の活用が別途必要です)。死後事務はあくまで故人の手続きですが、家族信託を使うことで故人以外の手続きも依頼できることに違いがあります。
死後事務委任契約の手続き
死後事務委任契約では、委託者が死後に備えて依頼しておきたい手続きの内容を自由に定めることができます。
主に必要となる死後の手続きについては下記のものがあります。
死後に必要な手続き例
役所への各種手続き:死亡届の提出、国民健康保険の手続き、年金の手続き等
葬儀、供養:葬儀の執行、葬儀社への支払い等
病院、介護施設への手続き:入院費の清算、介護施設の清算及び退去手続き等
その他:水道・ガス・電気等の手続き、クレジットカードの解約、遺品整理等
上記以外のことでも、それぞれ委託される方の生活スタイルによって、契約内容は変更できます。
知人や友人に負担をかけたくない、こういった手続きを身近な人に依頼したくない、といった方は行政書士などの専門家に依頼することも可能です。
死後事務委任契約にかかる費用
死後事務委任契約に係る費用は、①契約書作成時にかかる費用と②死後事務を実行するときの報酬がかかります。
①契約書作成にかかる費用
専門家に依頼する場合、契約書作成費用として15万円~20万円程度を目安に考えましょう。
なお、遺言書をセットをお申込みされる場合は割引制度を導入している専門家もいます。
死後事務委任契約書を公正証書として作成する場合、②の報酬額にもよりますが1万円程度が目安となります・
②死後事務を実行するための報酬
専門家に依頼する場合、30万円~50万円程度が目安となります。手続きの種類や数によって値段は変動しますが、ここも遺言執行者と兼務している場合は割引制度を導入している専門家もいます。納骨や葬儀費用など実費は別途必要です。
死後事務委任契約のメリット・デメリット
メリット
死後事務委任契約を締結しておく一番のメリットは、自分の死後のことについて安心することがなくなるということです。近年、周りに手続きをしてもらえる方がいなかったり、迷惑をかけたくないと考える方は増えています。しかし、亡くなったあとの手続きは、誰かが行う必要があります。その時に、死後事務委任契約という契約書があれば、受任する側もスムーズに手続きを行うことができます。お子さんなどが遠方に住んでいる場合など、事前に専門家に依頼してあると、お子さんにとってもありがたいことになります。
デメリット
デメリットは費用がかかるということです。また、委任した内容をしっかり実現してくれるのか本人は死亡しているため確認できないこともデメリットといえるでしょう。その方が本当に信頼できる人なのかをよく見極める必要があります。また相続人の方がいるのであれば、あらかじめ死後事務委任契約の内容を知らせておき、確認だけはお願いしておくのは良い方策です。
まとめ
ここまで死後事務委任契約について、概要やメリットデメリット、費用について解説しました。
死後事務委任契約はご自身の判断能力が不十分になってしまった場合、契約自体、結べなくなるため元気なうちに検討いただき、ご契約なさってください。
不安なことがある方は専門家に相談してみましょう。
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