皆さん、休眠会社という言葉を聞いたことはありますでしょうか。休眠会社とは、簡単にいうと長期間活動していない会社のことです。宗教法人も同じように長期間活動していない法人があります。宗教法人の場合は、休眠会社とはいわず不活動宗教法人といいます。実態がないのに法人登記だけ残っているのは登記への信頼を失うものであり、また法人格を犯罪に利用される可能性があるため何らかの対策が必要になってきます、それが不活動宗教法人の問題点です。
令和4年12月に発行された文化庁編「宗教年鑑(令和4年版)」によると、宗教法人の数は17万9952法人と18万の大台を切ったとのことでした。
そのうち仏教系は7万6774法人となっています。この数は今後も減少するものと思われます。宗教法人の数が減少している要因の1つとして、行政や宗派による不活動宗教法人の整理を進めていることがあげられます。
宗派によっては、不活動の宗教法人を活動している宗教法人に吸収合併するなどの対策をとっているところもあり、文化庁宗務課も不活動宗教法人対策に乗り出すなどしています。また、これに呼応するように自治体でも不活動収去法人の整理を進めております。そこで今回は、いわゆる不活動法人について解説していきます。
目次
不活動宗教法人とは
不活動法人とは、登記簿上は存在しているが、何らかの事情によって長期間にわたって宗教活動を停止してしまった法人のことをいいます。宗教法人法81条によると、下記に該当する場合は裁判所による解散命令の対象になるとされています。
- 1年以上にわたって宗教活動をしないこと。
- やむを得ない事由がないのに、礼拝施設滅失後2年以上にわたって施設を備えないこと。
- 1年以上にわたって代表役員及びその代務者を欠いていること。
以上の要件がありますが、実際には、3年以上活動をしていない、代表役員や責任役員またはその代務者が存在していない若しくは所在が不明である。総会が開催されていない、監督官庁に財産目録などの届け出をしていない。などの事情を総合的に考慮して行われています。株式会社であれば、休眠会社というには、最後に登記されてから12年という目安があります。休眠会社と比べると不活動宗教法人とみなされるのは期間が短くなっています。
不活動宗教法人の弊害
不活動宗教法人は、休眠会社と同じく法人格はあるものの実態がない状態です。本来、宗教法人は宗教活動するために存在しているのですが、宗教活動以外の事業を行う目的で売買が行われることがあります。実際に、弊所にも宗教法人の売買情報がないかとお問合せいただくことが年々増えてきております。
宗教法人の税金の優遇措置を悪用したり、納骨堂ビジネスのために宗教法人の購入を考える人もいます。
実際、インターネット上では、宗教法人の買主を募集しているサイトなども存在します。宗教法人が悪用されると、宗教法人制度の根幹を揺るがすことになりかねません。そこで不活動宗教法人対策が必要になってきます。
不活動宗教法人対策
不活動の状態を解消するには、①活動を再開する②合併する③解散するといった方法が考えられます。1番いいのは活動を再開させることです。
しかし、活動を再開させるといっても、代表役員がいないなど活動を再開する主体となる人がいなければ活動したくてもできません。そこで、単体での活動再開が難しいのであれば、実際に活動している宗教法人に吸収合併してもらう方法があります(合併の詳しい手続きについてはコチラ)。吸収合併も難しいのであれば解散(解散の詳しい手続きについてはコチラ。)という選択になります。以下、合併を選択した場合と解散を選択した場合のそれぞれのメリット・デメリットをみていきます。
合併を選択するメリットとデメリット
法人の運営が立ち行かなくなった際の選択肢として、合併は多くの利点を持ちます。特に、解散してすべてを清算するのではなく、他の法人に組織や財産を引き継いでもらうことで、教師や檀信徒の拠り所を維持できる点は大きなメリットです。
ただ、そもそもの教義が異なる団体であれば合併に適していません。例えばA宗の宗教法人が不活動宗教法人になっていた場合に、A宗とは異なるB宗の宗教法人に承継させるのは信仰が異なるため信者をどうするのかとかお墓をどうするのかなどの問題が出てくるでしょう。同じ宗派であってもその実現には、すべての権利義務を引き受けてくれる合併先を見つけ、合意を取り付けるという、非常に高いハードルが存在します。以下、合併という選択肢のメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう(合併の詳しい手続きについてはコチラ)。
メリット
清算手続が不要。
教師や檀信徒がいる場合は吸収法人に移籍できる。
残余財産があるときに吸収法人に引き継いでもらうことができる。
官報の掲載が不要。
解散より時間がかからない。
デメリット
吸収合併してくれる合併先との合意が必要。
合併先からすると借金や権利義務すべてを承継することにリスク。
解散を選択するときのメリットとデメリット
活動の再開が難しく合併相手が見つからない場合や、組織を完全に消滅させるしかない場合に選択されるのが「解散・清算」という手続きです。合併とは異なり、他の法人との合意は不要で、自らの法人の意思のみで手続きを進められるのが最大の特徴です。
しかし、その手軽さとは裏腹に、解散後には全ての法律関係を整理する、煩雑な清算手続きが待っています。ここでは、合併ではなく解散を選択する場合のメリットとデメリットを見ていきましょう(解散の詳しい手続きについてはコチラ。)。
メリット
単独で規則に則って認証申請ができる。
規則の内容によっては残余財産を引き受けることができる.
デメリット
清算手続が必要。清算結了まで時間がかかる。
残余財産の引受先が決まらない場合がある。
官報に掲載が必要。
不活動宗教法人になる前に検討を
不活動宗教法人の場合、その対策として3つの方法がありますが、どれもメリットデメリットがあります。また、そもそも誰が不活動宗教法人側の人間として活動するのか、代務者に就任する、責任役員の重任、総代の確保などの問題から解決しなければなりません。
その場合、境内地内にお墓などあればどうするのかなどの問題もあります。不活動宗教法人対策の手続でお悩みの方は、当事務所までご相談ください。
まとめ
宗教法人は永続性が求められる組織です。しかし、檀家離れも進み運営に苦しむ宗教法人もたくさんあります。お寺の将来を見据えて、不活動宗教法人にならないように対策を考えいくことが必要となります。
当事務所では、檀家離れなどで運営に悩む宗教法人のサポートも行っております。早期にご相談いただければできることが多くあります。ご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。