宗教法人の設立は都道府県知事の認証が必要であり、年数もかかることから複雑な手続きが必要となります。しかし、専門家に依頼すると当然ながら費用がかかります。そこで、宗教法人の設立を行政書士に依頼した場合に必要なる費用について見ていきましょう。
宗教法人の設立手続についてく詳しくはコチラ
目次
設立を依頼する専門家について
宗教法人の設立は、①規則の認証、②設立の登記、③包括団体の承認など大きく3つの手続きに分かれます。③の包括団体の承認は、包括被包括団体の関係にある場合だけに必要となります。
行政書士に設立手続を依頼すると、①規則の認証、③包括団体の承認手続を行い、②設立の登記は司法書士が行うことになります。
株式会社の法人設立は取り扱う行政書士・司法書士は多くいますが、宗教法人の設立に詳しい行政書士・司法書士は少ないといえます。
宗教法人の設立の手続で、株式会社などの法人設立と大きく異なる特徴は、①規則の認証と③包括団体の承認にありますので。ここに詳しい行政書士に依頼するのがおすすめです。
必ず必要な設立の費用について
宗教法人の設立手続は全て自分で行うことも可能です。その場合でも以下の費用は必ず発生します。
規則の認証
規則の認証は所轄庁(都道府県知事)が行います。所轄庁に支払う費用はかかりません。
設立の登記
設立の登記は主たる事務所を管轄する法務局にて行います。法務局に支払う費用もかかりません。あくまで、設立登記に関する費用ですので、設立後に宗教法人の履歴事項証明書や印鑑証明書などの発行には手数料が必要です。
なお、主たる事務所を管轄する法務局とは、宗教法人の場合、各地方の本局になることがほとんどですので最寄りの法務局でない可能性があるためご注意ください。
包括団体の承認
包括団体の承認を得るためには礼録や冥加金といった名目でいくらかの費用がかかります。金額は包括団体によって異なりますので、事前に確認しておいてください。
また、包括団体の承認を得るには、包括団体が定めた基準を満たした団体であることが必要です。その基準は所轄庁が定める基準と異なりますので注意が必要です。
専門家に支払う費用について
宗教法人の設立手続きは、法律や行政に関する専門的な知識を要するため、専門家に依頼するのが一般的です。この手続きは、大きく分けて所轄庁への「認証」手続きと、法務局への「登記」手続きの2段階で構成されます。
通常、前者の「認証」を行政書士が、後者の「登記」を司法書士が担当します。そのため、専門家に支払う費用も、それぞれの専門家に対する報酬の合計額となります。以下では、行政書士と司法書士それぞれに支払う費用の目安について解説します。
行政書士の報酬基準
行政書士の平均報酬は、日本行政書士連合会が統計調査を行い公開しています(詳細はコチラ)。令和2年の調査結果では、3万円から110万円と幅広く記載されています。
平均値は約30万円となっていますが回答者の数は11名と少数ですのであまり参考になりません。
また、業務内容も、書類の最終確認だけなのか、トータル的なサポートまで行うかで費用は大きく異なりますので一概にはいえません。
専門性が高いところであれば100万円程度。安いところでは50万円~60万円ぐらいから対応する事務所が多いようです。
司法書士の報酬基準
司法書士への報酬は、あくまで設立の登記申請のみを前提とします。行政書士に所轄庁の認証を依頼している場合は、行政書士の方で、事前に司法書士を打合せしながら進めていますので、10万円程度が司法書士の報酬の目安とお考えください。
ご自身で規則認証の手続を行った場合、司法書士の確認事項も増えますので報酬額は増えるとお考えください。
その他必要な費用
専門家への報酬のほかにも、宗教法人を設立し、活動をスタートさせるためには、いくつか準備しておくべき費用があります。法人としての体裁を整えるための事務用品から、不動産にかかる手続き費用、そして個人資産を法人へ寄附する際の税金問題まで、実務上見落とせないポイントです。以下、これらの費用について具体的に見ていきましょう。
非課税証明願(境内建物・境内地証明願)
宗教法人の所有する不動産は、全てが非課税となるわけではありません。所有する不動産のうち「宗教法人が専らその本来の用に供するもの」に限り非課税となります。
つまり宗教行為に使用している不動産については非課税ということになります。しかし、固定資産税を課す市町村からすれば、どの不動産が宗教行為として利用されているか分かりかねます。
そこで、不動産を所有している宗教法人の方から、この不動産は「宗教法人が専らその本来の用に供するもの」に該当していますよということの証明願を申請します。これを非課税証明願とか境内建物・境内地証明願といいます。
この申請も自分でする分には費用はいりませんが、専門家に依頼すると報酬が発生してきます。宗教法人の設立に詳しい専門家であればこのあたりの手続も含めて対応してくれるところもありますので事前に確認してください。
印鑑などの事務用品や広告物
宗教法人を設立すると法人の実印(法人印)を法務局に登録することになります。登録は設立登記の時に司法書士が一緒に手続をしてくれます。
この法人印と法人名義で銀行通帳を開設するための銀行届出印、角印(法人の認印)、ゴム印(法人名・所在地・代表役員の名前)なども併せて準備しておくとあとあとの手続のときは樂になります。
印鑑のセットはインターネットで「法人印」と検索すれば安く販売している業者が見つかります。他にも封筒や名刺、案内パンフレット、WEBサイトなど宗教法人の活動を認知してもらうためのツールの費用なども必要となります。
宗教法人は設立してからがスタートですので設立後のプランニングも行っておきましょう。
譲渡所得税
宗教法人にかかる費用ではありませんが、宗教法人の設立に際し、個人の方が土地を宗教法人に寄附すると、その個人に譲渡所得税がかかります。
たとえば、住職が個人名義で使用していた土地建物を法人設立後は宗教法人名義に変えようと寄附した場合、住職個人に譲渡所得税がかかることがあります。
公益認定を受けている宗教法人への寄付の場合など、税金がかからないケースもありますので、事前に税理士に相談されることをおすすめします。都道府県などによって取り扱いが異なりますが、寄附ではなく貸与や売買にするなど事前に対応しておきたいところです。
まとめ
本記事では、宗教法人の設立にかかる費用について、ご自身で手続きした場合でも必ず発生する費用、専門家への報酬、そしてその他の諸費用の3つの側面から解説しました。
設立手続きそのものに手数料はかかりませんが、包括団体への礼録や冥加金は必要です。費用の大部分を占めるのは、行政書士や司法書士といった専門家への報酬であり、その金額は依頼する業務の範囲によって大きく変動します。
さらに、法人印の作成や、個人から法人へ資産を寄附する際の譲渡所得税など、見落としがちな費用も存在します。宗教法人の設立は、多岐にわたる費用と手続きを伴う大きな事業です。
まずは費用の全体像を正確に把握し、信頼できる専門家と相談しながら、計画的に準備を進めることが成功の鍵となります。