宗教法人を設立するにあたって必要な条件を解説します

宗教法人を設立するためには、宗教団体としての実体があることと、その団体の財産を管理運営するためであることが必要になります。では、どのような条件が整っていれば宗教団体としての実体があり、財産管理するために必要と認められるかについてご説明します。

宗教法人設立に必要な手続き

① 規則の作成(法12条1項)

宗教法人を設立するためには、まず、所定の事項を記載した規則を作成する必要があります。
規則とは、株式会社でいう定款にあたり、その法人の基礎となる事項について定めたものです。つまり、株式会社を設立するときに定款を作成するように、宗教法人を設立するときには、規則の作成が必要となります。規則のひな型は(ぎょうせい「宗教法人の管理運営の手引 第一集 宗教法人の規則」(二訂版) URL https://shop.gyosei.jp/products/detail/8534)が参考になります。

② 設立発起人会

株式会社では、代表取締役と取締役がいます。宗教法人も同じように、代表役員と責任役員が必要になります。この代表役員と責任役員になる人達が集まって、設立に係る設立発起人会を開催し、議事録を作成します。
責任役員は、最低でも3人以上置く必要があり、そのうち1人を代表役員とします(法18条1項)。
設立発起人会では、作成した規則案の他に、宗教法人の名称、代表役員及び責任役員の決定、所轄庁への認証申請手続の権限付与、礼拝施設の宗教団体への寄附等について承認手続を行います。

③ 公告(法12条2項・3項)

規則を作成し、所轄庁の認証を受けるためには、認証申請の少なくとも1か月前に、信者その他の利害関係人に対し、規則の案の要旨を示して宗教法人を設立しようとする旨を公告しなければなりません。

④ 包括宗教団体による承認

包括宗教団体とは、個々のお寺が属する統括団体のことをいいます。例えば、高野山真言宗とか日蓮宗のことを包括宗教団体といい、高野山真言宗〇〇寺とか日蓮宗〇〇寺といった皆さんのご近所にある町中のお寺を被包括宗教団体といいます。一方、どこの包括宗教団体にも属しない宗教団体もあり、これを単立宗教団体といいます。
設立する宗教法人が、どこかの包括宗教団体に属する場合は、包括宗教団体の代表者の承認が必要になります。承認手続は、包括宗教団体ごとに異なります。
一方で、単立宗教の場合は、どこかに属している団体ではないので、所轄庁以外に、別途、どこかの団体の承認を得る必要はありません。

⑤ 所轄庁への規則の認証申請(宗第12条第1項)

作成した規則は所轄庁の認証を受けなければなりません。
宗教法人の所轄庁は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事、2つ以上の都道府県にも境内建物を備える宗教法人の場合は文部科学大臣となります。

宗教団体の要件(法14条1項1号)

所轄庁が、規則を認証するためには、規則を認証申請した団体が、宗教法人法上の宗教団体でなければなりません(法2条)。では、どういう活動をしている団体であれば宗教団体として認められるかを検討していきましょう。

① 能動的な活動が必要

宗教団体の定義については、宗教法人法2条によると「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的」とする団体のことをいいます。
ポイントは、すべて能動的に活動するように記載されていることです。教義を「聞く」ではなく「ひろめ」、儀式行事に「参詣」するではなく「行い」と記載されているように、宗教に関わる団体であっても単に受動的な活動をしている団体ではなく、能動的な活動をしている団体であることが必要になります。
このことから、どのような教義があり、その教義に基づいてどのような活動をしているのかを所轄庁に説明する必要があります。
そして、「信者を教化育成」するわけですから、信者の存在を前提としていることが分かります。そこで信者名簿も必要になってきます。

② 団体固有の教師(住職・宮司・牧師など)がいること

宗教団体として能動的に宗教活動をするためには教師の存在が必要です。お寺でいうと、誰が住職として活動するかということです。
教師は宗教活動に専念できるように専任性が求められます。専任の教師といえるためには、教師活動だけで生活ができていることが必要になります。つまり、教師の生活を支えうるだけの信者の数が必要になってきます。
宗教法人法上の宗教団体といえるためには、専任の教師がいて、それを支える信者の数が必要になります。全くのゼロの状態からだと、ここまでの基盤を作るだけでも大変ですね。

③ 公衆的礼拝施設を備えること

公衆的礼拝施設といえるためには、家庭内にあるような神棚や仏壇といった閉鎖的な空間にある施設ではなく、信者等が自由に出入りできるような公衆性を備えた施設が必要になります。
礼拝施設は原則として自己所有であることが必要です。
宗教団体を宗教法人にする目的は、財産を管理するためでした。とすれば、賃貸ではなく、自己所有が原則になることが理解できるかと思います。
また、自己所有の土地建物は抵当権等の負担が付いていないことが必要となります。返済可能性があったとしても、所轄庁の認証を得るためには高いハードルになるでしょう。ここは、次に述べる「永続性」ということを考えれば理解できると思います。抵当権が付いている不動産だと、借金などを返済できなければ第三者の手に渡ってしまうことがあるからですね。

④ 永続性があること

宗教団体は既に存在し、現実に活動しているだけでなく、将来も継続して活動しうる団体であることが必要です。そのため、負債等、団体の永続性を妨げる要因がないことが必要です。

⑤ 団体運営能力があること

宗教団体における「団体性」とは、法人格を与えるに相応しい団体である必要があります。そこで、団体性の要件として、継続的な組織が確立していなければなりません。継続的な組織といえるには、団体の規約・代表機関・総会の設置、運営に必要な書類(役員名簿、議事録、事務処理簿、財産目録、収支計算書、財産目録、境内建物に関する書類など)を作成し、備付なければなりません。

宗教法人設立のまとめ

これまで見てきたように、宗教法人を作るには、まず宗教法人法でいう宗教団体でなければなりません。そして、宗教法人法でいう宗教団体になることは、一朝一夕とはいきません。

実は、筆者のところには、全く宗教活動と関わりのない団体からも宗教法人設立の相談が寄せられることがあります。その中の一部には、宗教法人設立後も宗教活動する気持ちが全くない方もおられます。

宗教法人は、税金の優遇措置があり、また、株式会社ではできない墓地や納骨堂経営を行うことができるためか、ビジネスのみを目的として、宗教法人を利用したいと考える方も中にはおられます。
これは懸念すべき事柄です。なぜなら、宗教法人は、人の精神作用にかかわる活動を行う公益の団体であり、人々の心の拠り所となるべき場所といえるからです。宗教法人はビジネス目的に利用されてはいけません。

年々、宗教法人を取り巻く環境は厳しくなり、国民の中には、税の不公平感と宗教法人全体への不信感をお持ちの方が年々増えているように感じます。宗教法人が有する公益性を考えると、法人としての適正な運営は、社会から今後ますます求められるでしょう。

これから、宗教法人を設立される方は、この事も十分に留意して、手続を行っていただければ幸いです。

田村行政書士事務所では、宗教法人の設立に関するお手伝いをしております。宗教法人設立でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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