副住職の方が先代からお寺を引き継いて住職に就任した場合や、兼務寺院や無住寺院のお寺の住職に就任した場合、ほとんどのお寺では住職=宗教法人の代表役員となりますので、代表役員変更の手続きが必要となります。
では、この手続きにかかる費用はいくらぐらいでしょうか。手続きの関係上、単立の宗教法人と被包括宗教法人で異なりますので分けて説明いたします。
目次
単立の宗教法人の代表役員が変更した場合にかかる費用について
宗教法人に代表役員に就任すると、都道府県知事への届出と法務局に代表役員の変更登記の申請が必要になります。宗教法人は公益法人であるため、管轄の都道府県知事への届出が必要になります。この届出に関する費用はかかりません。
また、登記簿には代表役員の名前と住所を記載する必要があるため(宗教法人法第53条、第52条2項6号)、代表役員を変更した場合は、登記簿の内容を変える必要があります。
そこで、法務局に代表役員変更登記の申請が必要となります。株式会社であれば、法務局に納める収入印紙として資本金の額によって1~3万円が必要となりますが、宗教法人の場合はこの収入印紙は不要です。
従って、都道府県知事に対する届出と法務局へ代表役員変更登記の申請については、住職がご自身で、手続を行う場合の費用はかかりません。
被包括宗教法人の代表役員が変更した場合にかかる費用について
被包括宗教法人の代表役員が変更した場合、手続上、上記で述べた単立の宗教法人の場合と同様に、都道府県知事への届出と法務局への代表役員変更登記申請は必要となりますが、ご自身でその手続を行う場合は、費用はかかりません。
ただし、被包括宗教法人の場合、代表役員に就任するためには、包括宗教法人の代表役員から任命を受ける必要があるケースがほとんどです。詳しくは、ご寺坊の規則をご確認ください。
この宗派代表役員の任命を受けるために、冥加金・礼録等がかかることがあります。費用名目や費用の額は内部的な取り決めによるので宗派によって異なりますが、費用がかからない宗派もあればから3万円程度かかる宗派もあります。
その他、副住職や住職でなかった方が住職に就任するための冥加金・礼録等も別途必要になってきます。
従って、都道府県知事や法務局への費用は不要でも、被包括宗教法人の場合は、属する宗派への費用は、最低限必要となります。
専門家に依頼した場合にかかる費用
これまで見てきたように、代表役員を変更した場合、都道府県知事への届出や法務局への代表役員変更登記の申請が必要であり、被包括宗教法人の場合は宗派の任命を受ける必要があります。
これらの手続き行うためには、責任役員会の議事録や総代の同意書、各種申請書の作成など、申請に必要な書類を集めて作成する必要があります。
ほとんどの方にとって、宗教法人の代表役員に就任する機会は1回のみです。その1回のために手続きに必要なことを調べて、不慣れな書類を作成することはかなりの労力が必要となります。
そこで、外部の専門家を活用する方法があります。法務局に関連する部分は司法書士の職域ですが、その他の部分については行政書士が対応できます。
専門家への報酬は、どこまで依頼するかにもよりますが、10万円~30万円程度で考えておくといいでしょう。
気を付けて頂きたいのは、行政書士や司法書士であれば誰でもでもいいわけではありません。宗教法人に詳しい行政書士や司法書士に依頼することをお勧めします。
ご相談は宗教法人に詳しい専門家にしないと手間が増えます
宗教法人に詳しくない行政書士や司法書士だと、宗教法人に使われる独特の用語の理解ができていません。
- 被包括宗教法人?
- 単立?
- 寺院規則?
- 宗派代表役員による任命?
- 総代?
このようになりますので、住職から説明して教えてあげる必要があります。更に、お寺の状況によっては、代表役員の代務者を選任してから責任役員を定め代表役員の任命を行うなど専門的な理解がないと対応できない場合もあります。
また、代表役員を変更するということは、お寺の運営を見直す機会でもありますので、そのアドバイスを受けるためにも宗教法人に詳しい専門家に依頼する方が良いでしょう。
宗教法人に詳しい専門家は数少なく、お知り合いにいない場合は、是非、田村行政書士事務所までお気軽にご相談ください。
まとめ
以上をまとめると、このようになります。
宗派代表役員の任命に要する冥加金等 | 0円から3万円程度 (宗派による) |
都道府県知事への届出に要する費用 | 0円 |
法務局に支払う費用 | 0円 |
専門家への謝金 | 10万円~30万円 |
※その他、郵送費・交通費等の実費
※住職の地位を取得するための志納金等が必要になる場合があります。
最後までお読み頂きありがとうございました。