宗教法人には税金がかからないということはよく耳にします。しかし、宗教法人であればなんでも非課税というわけではありません。そこで、宗教法人と固定資産税について解説していきます。
目次
1 固定資産税とは
固定資産税とは、毎年1月1日に所有する土地・家屋・償却資産などの固定資産について課税する税金です。土地家屋であれば1月1日に登記簿謄本に所有者として記載されている方が納税義務者となります。
2 非課税の範囲
宗教法人の保有する固定資産は全て非課税の対象となるわけではありません。その保有する固定資産のうち、「専らその本来の用に供する」宗教法人法3条に規定する「境内建物」および「境内地」に該当する固定資産のみが非課税となります。ただし、公益事業およびその他の事業の用に供している場合は固定資産税の課税対象になります。税金には「担税力」という考え方があります。担税力とは税金を負担する力のことです。消費税であれば、消費する力がある人は消費税を負担する力があるとみなされているわけです。つまり、境内建物や境内地であったとしても公益事業・その他の事業を行っているのであれば固定資産を負担する担税力があるとみなされて課税対象になるという考え方です。
(1)「専ら」とは
「専ら」とは、簡単にいえば「ほとんど」という意味です。つまり、たまには違うことに使ったりすることもあるけれど、ほとんどが宗教法人の活動にために使っている事をいいます。
(2)「その本来の用に供する」とは
「その本来の用」とは、宗教活動に必要な目的で使用していることをいいます。上記の「専ら」とあわせると、その境内建物や境内地は、「ほとんどが宗教活動を行う目的のために使用している」ということになります。宗教活動以外のことに使ってもそれが直ちに課税対象になるというわけではありません。
(3)「境内建物」とは
境内建物とは、宗教活動を行うのに必要な建物などのこといいます。具体的には、本殿・本堂・庫裏・社務所・宗務所・納骨堂・教職舎・修行所・宿泊施設・会館などのことをいいます。これらの建物などを「専らその本来の用に供する」ことが必要となります。宿泊施設を例に挙げると、信者の参拝時の休憩などでの利用目的であれば良いですが、一般の方向けの宿坊として利用可能であれば固定資産税の課税対象となる可能性があります。
(4)「境内地」とは
「境内地」とは、宗教法人施設内の固有の土地のことをいいます。境内建物が建っている土地・庭園・参拝者用の駐車場がこれに含まれます。墓地も非課税の対象となりますが、非課税の根拠条文が異なります。ここは次のペット霊園の箇所で、どのように考えるのかに関わってきます。
3 ペット霊園の固定資産税
ペット霊園は民間の事業者も行っているところもあり、宗教法人だけ非課税とすれば不公平感が感じるところでないかと思います。裁判所の判断では、ペット霊園について課税対象とするものと非課税とするものに分かれています。
さきほど、墓地が非課税となるのは境内地が非課税となるのと根拠条文が異なることをお伝えしました。両者の違いは、「専らその本来の用に供する」という要件が加わるか否かになってきます。つまり、境内地であれば「専らその本来の用に供する」という要件が必要(地法税法348条2項3号)になりますが、墓地を非課税とする根拠は条文が異なり、そこには「専らその本来の用に供する」という要件が加わらないのです(地法税法348条2項4号)。そこで、ペット霊園が「墓地」に該当すれば非課税になるわけですが、「墓地」とは、墓地埋葬法の適用がある墓地と同義とされており、ペット霊園は墓地埋葬法の適用を受けません。そのため、ペット霊園は墓地ではありません。
そうすると境内地に含めて考えることができるかですが、境内地が非課税となるためには「専らその本来の用に供する」が必要となります。そのため、宗教法人がペット霊園を行う場合、ペット供養が、その宗教法人の宗教活動に含められるかによって判断は変わってきます。その判断は、客観的にみて、その宗教法人の宗教行為であると社会的な認知がされているかという観点から判断された判例があります。
4 不動産を購入するときの注意点
不動産を購入や譲渡を受けるとき、登記申請の時に登録免許税を納める必要あります。しかし、宗教法人が「専らその本来の用に供する」宗教法人法3条に規定する「境内建物」および「境内地」に該当する不動産を購入などする場合は、この登録免許税が非課税となります。
注意点としては、登録免許税を非課税とするためには、宗教活動を行うための土地ですよという証明を所轄庁してしてもらい、その証明書を登記申請書に添付する必要があります。証明書の発行には時間がかかるため、あらかじめスケジュールをきちんと組んでおきましょう。
5 宗教法人を設立する場合の固定資産税はどうなる?
宗教法人を設立するとき、従来個人名義で使用していた土地を宗教法人名義に変更することになる場合が多いのですが、この場合も上記4で述べた登録免許制を非課税にするためには、所轄庁の非課税証明書が必要になってきますのでご注意してください。