宗教法人の代表役員代務者・責任役員代務者の役割と選任手続きについて解説します!

 

宗教法人法には代表役員や責任役員の代務者に関する規定があります(20条)。代務者とはいったいどのような役割があり、どのように選任するのかを解説します。

1 代務者とは。

代務者とは代表役員や責任役員が欠けた場合に、代表役員や責任役員の代わりとなって事務の決定を行う人のことをいいます。あとで説明しますが、仮代表役員・仮責任役員とは異なります。

宗教法人には、代表役員と責任役員が必ずいます。宗教法人の事務は、規則に別段の定めがなければ、代表役員と責任役員の決議によって決めます。

そのため、代表役員又は責任役員が欠けた場合は、宗教法人の事務の決定ができなくなり法人運営に支障をきたすことになります。そこで代務者という制度を置くことで、宗教法人の運営に支障がきたさないようにしています。

2 代務者を置くべき場合とは。

代務者を置くべき場合として宗教法人法20条に規定があります。

①代表役員又は責任役員が死亡その他の事由に因って欠けた場合において、すみやかにその後任者を選ぶことができないとき。

②代表役員又は責任役員が病気その他の事由に因って三月以上その職務を行うことができないとき。

①は「欠けた場合」、②は「三月以上その職務を行うことができないとき」という点で異なります。①と②のでは代務者の選任方法も異なるのが一般的です。

3 欠けた場合とは。

上記①と②の違いは言葉では理解できると思います。しかし、実際にどのようになれば「欠けた」といえるのかの線引きは難しいところです。そこで参考になるのが、宗教法人法第23条にある「役員の欠格事由」の規定です。宗教法人の役員になれない人が同条に列記されています。

①未成年者
②心身の故障によりその職務を行うに当たって必要となる認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
③禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

以上が法23条の規定です。これらの規定に該当する者は、宗教法人の代表役員及び責任役員になれません。

実務上、よく問題になるのが②です。住職や責任役員の方が認知症になった、交通事故などにより判断能力がなくなってしまった等の場合がこれに該当します。

この「欠けた」には、そもそも住職がいない無住寺の場合も該当します。失踪などから住職が不在となったお寺を再建するためには、代表役員と責任役員が必要になるので代務者をまず選任することで手続きを進めることが必要になってきます。

4 代務者の資格と選任手続き。

代務者の資格要件と選任手続きは、各宗教法人の規則の定めに従います。ほとんどの場合、代表役員の代務者と責任役員の代務者とでは代務者になれる資格が異なります。代表役員は住職が就任することがほとんどのため、代務者になれる者も宗教上の地位を有していることが要件となったりしています。被包括宗教法人の場合は、包括宗教法人の代表役員の承認が必要となることがあります。詳しくは、ご寺坊の規則をご参照ください。

5 代務者の役割とは。

宗教法人法第20条2項には、「代務者は、規則で定めるところにより代表役員又は責任役員の代わってその職務を行う。」との定めがあります。各寺院の規則にも代務者の職務権限に関する規定が置かれています。

代務者は、代表役員または責任役員が欠けた場合や職務できない状態のときに活躍する存在なので、権限を絞ってしまうより、全ての職務権限があったほうがいいわけですが、あくまで緊急時の代打ですので、その権限行使は必要最小限の方が望ましいでしょう。

6 総代が欠けた場合は。

総代が欠けた場合に代務者と用意する宗教法人はほとんどありません。総代の役割は責任役員よりか重要度が低く、欠けた場合には他の檀信徒の中から補充することになります。

7 仮代表役員、仮責任役員との違い。

代務者を置くべき場合は、本来の代表役員や責任役員が物理的に職務を行えない場合ですが、仮代表役員と仮責任役員は、本来の代表役員や責任役員との利益が相反する場合に置かれます。その趣旨は、代表役員や責任役員が自分たちの利益を優先して宗教法人に不利益となる処分を行うことを予防し、宗教法人の利益を守るための制度なので、代務者とは求められる八鍬維が異なってきます。

 

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