宗教法人も一般企業と同じように事業承継が行われます。株式会社の事業承継であれば、株式を譲渡する方法で行われますが、宗教法人の場合、どのようになるのか見ていきましょう。
責任役員に就任する。
宗教法人の場合、株式といった法人を所有しているという権限を示す物はありませんので、宗教法人の代表役員に就任することが事業承継になります。
宗教法人の代表役員に就任する方法は、当該宗教法人の規則に定めがあります。多くは、「責任役員のうちの1人を代表役員にする」といった規定が入っているかと思います。
そのため、まずは責任役員に就任する必要があります。規則に中には、責任役員になるための資格についても定めがある場合はその定めに従って手続きを追っていくことになります。
また、檀信徒の方々には事前に十分な説明をしておくことが、後々のトラブル防止になりますので、手続面だけではなく関係者とのコミュニケーションは十分に図っておきましょう。
代表役員に就任する。
責任役員に就任すると、規則の定めに従って代表役員に就任します。一般的には、「代表役員はこの法人の住職とする」といった趣旨の規則を定めているところが多いかと思います。
被包括宗教法人の場合。
被包括宗教法人に場合は、代表役員に就任できる資格などに包括宗教法人の宗規や宗制などに定めがあります。「代表役員=住職」となると、宗派が認める住職であることが必要になりますので、ここは宗派の宗教的な解釈によって住職としての資格を付与される必要があります。
お試し期間を定めるところも。
現職の住職からすると、後継者にお寺を任せるということは、自分がこれまで守ってきたお寺を手放すことになります。そのため、誰にでも渡していいものではありません。そこで、1年ぐらいの期間を定めて、その者が住職にふさわしいか見極めるための猶予期間を作る宗教法人もあります。これは、一般的な企業でも行われることです。なお、宗派によっては、後任住職といった制度を定めて事業承継の円滑化を図っているところもあります。
登記申請と都道府県への届出を忘れずに。
代表役員の変更は登記事項ですので、新たに就任が完了した場合は法務局に登記申請してください。また、登記が完了したら新しい登記簿謄本を持って所轄の都道府県の宗教法人担当のかかりに届出を行ってください。宗派及び檀信徒への報告も忘れないようにしましょう。
代表役員に就任してからがスタートです。
代表役員の交代の際に先代の住職から、お寺の重要書類一式が渡されます(保管しているところは)。その時に、初めて宗教法人の規則を見る方も多くおられます。重要書類は必ず確認し、今後の運営に不都合な点がないか精査して、不都合がある場合は変更しておきましょう。後回しで大丈夫と考えていると、そのうち日中の業務に追われ、内部を整備する時間がとれなくなり、あとで何か始めるときに問題がでてくる可能性もあります。
良き伝統は継承しつつ、時代に応じた寺院運営を行うためにも、新住職に就任したときに内部的な構造を見直す機会とされることをお勧めします。