宗教法人が責任役員を選任するときの注意点と登記の有無について詳しく解説!

宗教法人には3人以上の責任役員を置く必要があり、そのうちの1人を代表役員とします(宗教法人法第18条1項)。では、この責任役員は誰でもなれるでしょうか。その要件について検討します。

 

1 適正な責任役員の数とは。

 

前述したように、宗教法人の責任役員は3人以上必要です。3人以上であればいいので5人でも10人でも法律上は問題ありません。しかし、責任役員の数はやるべく最小人数にしておくことをおすすめします。理由は責任役員の数が多いと、機動的な寺院運営に欠ける要因になりかねないからです。

責任役員は株式会社でいう取締役になります。取締役は日ごろから会社内で業務をしていますが、宗教法人の責任役員は、日ごろは宗教法人内にはおらず、お寺の細かな運営にも関与していない場合が多くあります。

宗教法人の規則をみると、規模の小さなお寺でも責任役員の数が8人もいるところなどが多くあります。責任役員も高齢化しており、認知症など判断能力が低下していると宗教法人運営のための議事に参加してもらうことができなくなり、運営上の不都合が生じます。

責任役員は宗教法人の規模に応じた数にしておきましょう。規則に責任役員の数が記載しているので、責任役員の数を減らしたり増やしたりするには規則変更が必要になりますのでご注意ください。

 

2 責任役員になるための資格とは。

 

宗教法人法上は責任役員になるための資格はありません。しかし、被包括宗教法人の場合は、宗規などに責任役員の資格制限を設けているところがあります。例えば、「総代の中から選ぶ」、「檀家の中から選ぶ」、「同じ宗派の別の寺院の住職から選ぶ」という規定や「寺族はダメ」といった制約を定めているところもあります。

被包括宗教法人の場合は、責任役員になる人は届出を行うなどの手続きも必要になったりしますので、ご寺坊の宗規などをご確認ください。

 

3 責任役員になって欲しい人の建前と本音。

 

責任役員はお寺の事務を決定する役割を担っている重要な立場の人です。宗教法人はその公益性から、建前上は、身内以外の第三者が責任役員に就任するのが望ましいといえます。しかし、現実的には、ある程度身内に入ってもらう方が安心できることが多いです。

お寺を私物化することはもちろんダメですが、住職の身分はそれほど強固ではありません。仮に、好ましくない第三者が入ってきて、宗教法人の利益になるためでなく悪意を持って宗教法人を意のままに操ってくる危険性もゼロとはいえません。

責任役員には適切な寺院運営の判断ができる人に就任してもらうことが望ましいと言えます。

 

4 責任役員の選任要件も確認しておきましょう。

 

例えば、規則に「責任役員は総代の中から選任する」という規定があったとしましょう。では、「総代」ってどうやって決めているのでしょうか。多くは、檀家の中から選んでいると思いますが、規則にその要件が書いていなければ、責任役員になるための資格である「総代」としての地位は明確ではありません。その方が檀家であるとどうやって証明できますでしょうか。檀家の要件、総代の要件、責任役員の要件、それぞれが明確に「この人です」といえるような内容の規則を備えておくことは紛争予防の観点からは重要です。

また、万が一の場合に備えて解任規定も盛り込んでおくといいでしょう。規則を一度確認しておくことをおすすめします。

 

5 責任役員の登記について。

 

結論からいうと責任役員についての登記は不要です。代表役員については登記事項となっています(宗教法人法第52条2項6号)。

 

6 最後に。

 

責任役員は宗教法人の運営を担ううえで重要な存在です。誰に就任してもらうかという観点以外にも、適正手続きの点にも注意が必要です。責任役員や宗教法人の運営についてのご相談があればお気軽に当事務所にお問合せください。

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