納骨堂の許可について行政書士が分かりやすく解説します!

お墓の空きがない、お墓を建てると負担が大きい、合祀はまだ先がいい、終活の受け皿を作りたいなど、納骨堂の建設を望む宗教法人は年々増えているように感じます。

しかし、納骨堂は許可をとらないと経営(法律上は納骨堂の経営許可)することはできません。許可なく経営した場合は罰則規定もあります。そこで、納骨堂の許可申請について、宗教法人専門の行政書士が分かりやすく解説します。

許可申請はどこに出せばいい

納骨堂を経営するには許可が必要ですが、その根拠は墓地埋葬法(墓埋法)にあります。墓埋法10条をみると「都道府県知事の許可」と書かれています。

しかし、地域のよっては「市長」の許可が必要となります。納骨堂は、設置する地域の宗教的感情、風土や慣習など考慮して設置される建物なので、各地域のことに詳しい市長に権限が委譲されています。以下では、許可権者を市長として解説していきます。

許可申請の手順

納骨堂の設置・経営許可を得るには、単に書類を提出するだけでなく、いくつかの段階を踏む必要があります。ここでは、具体的な申請手順を順を追って解説します。

宗教法人内部の手続確認と事前相談

まず重要なことは宗教法人内部での意思決定です。宗教法人法では宗教法人の事務については責任役員の過半数の議決が必要とされています。

また、各宗教法人の規則によって総代の同意が必要な場合もあります。これらの各館機関の方には事前相談をいれておきましょう。納骨堂は永続性が求められますので、どのくらいの需要があり、どのくらいの規模の納骨堂にするかも詳しく調べておくことも重要です。

市役所担当部署への事前相談

納骨堂の許可申請は地域の事情を考慮できる市長になります。これは何を意味するかというと許可の要件も地域によって異なるということです。

例えば、神戸市であれば設置場所に隣接する居住者及び土地所有者の同意(実印及び印鑑証明書の添付も必要)が必要になります。他の地域では、近隣〇m以内の自治会長の同意が必要といった地域ごとの要件があります。

そのため、どの要件が必要になってくるのかを事前に調べたうえで進めていく必要があるので、市役所担当部署に早めの事前相談を行いましょう。

事前相談を行い、必要な要件を確認して許可が取れそうだと判断したら、宗教法人内部の手続、建設業者、仏具店などと打ち合わせ、申請書類の作成を行います。

納骨堂経営許可申請の提出

役所との相談のうえ書類の準備ができましたらいよいよ提出です。気を付けるべきことは、建設工事に着手するには申請許可が出てからになるということです。役所に申請すればその場で許可がでるわけでなく審査が行われます。

この審査期間は役所によってことなります(目安:30日から45日)。審査がとおり、無事に許可ででれば工事に着手します。但し、納骨堂を新築する場合は、信者や利害関係人に向けて公告を行う必要があります。

また、建築業者の中には、納骨堂建設のこのような一連の許可事情を知らないところもありますので業者との契約段階からしっかりと確認しておきましょう。

なお、申請書類の作成・提出の代行は行政書士若しくは弁護士になります。無資格の業者は代行できませんのでコンプライアンスにご注意ください。

以下、申請書類は役所よって異なりますが、神戸市の場合を例にあげてみます(平成31年1月時点)。

納骨堂経営許可申請書、事業計画書、施設概要書
法人登記履歴事項全部証明書、法人登記印鑑証明書(発行後3か月以内)
責任役員会議事録、責任役員であることを証明する書類(原本証明必要)
宗教法人規則(規則により必要な場合は本山承認書添付)
位置図(縮尺1/10,000程度)
法務局公図及び地積測量図、法務局土地、建物全部事項証明書(発行後3か月以内)
隣接居住者及び隣接土地所有者の同意書(印鑑証明書添付)
建築確認申請に対する確認済証
地番割込図、敷地求積図、配置図(納骨堂の一、駐車場等を記入)
平面図(納骨堂の配置、壇数・納骨堂部分の面積を記入)
立面図、断面図、天井伏図、納骨壇配置図、納骨壇姿図、建具表、仕上表
宗教法人の檀信徒名簿、納骨堂使用希望者名簿
納骨堂管理規則(条文、使用申込書、使用料、管理台帳等)
収支計画書(納骨堂建設に関する収入と支出)
収入に関する書類(金融機関残高証明書または預金口座通帳写し等)
支出に関する書類(見積書、工事請負契約書等)
現況写真(撮影方向を記入)

工事完成検査・使用許可書

工事が完了したら、写真等を添付して工事完了の検査を受けます。検査が無事にとおると納骨堂使用許可がでますので、納骨堂利用希望者への募集を行います。

納骨堂の許可申請の注意点

納骨堂の建設は周辺住民にとっては好ましく考えない方もいて取消訴訟も良く行っています。現状では取消しがみとめられるのはハードル高いと言えますが、古来より、地域コミュニティの中心にお寺があったことを考えれば、日ごろからのお付き合いの有無が、こういった訴訟を防ぐ要因といえるでしょう。

また、納骨堂の建設は多額の費用を要しますし永続性が求められます施設の建設となります。あとで採算が合わなかったとなると代表役員の責任は決して小さくないでしょう。

なかには、お寺のことを考えてではなく、業者の利益の観点のみから納骨堂の建設を進めてくる事業者もいてます。そのような業者にはご注意してください。

専門家の活用方法

納骨堂の経営許可は、多額の費用も掛かり、信者・周辺住民との関係にも大きな影響を及ぼします。また、進め方を間違えると申請そのものができなくなる可能性も十分にあります。

そのため、許可のことだけでなく、宗教法人の事情にも詳しい行政書士に相談するのがおすすめです。

しかし、宗教法人に詳しい行政書士はほとんどいません。インターネットなどで本当にその人が専門性を有しているかお調べいただいたうえでご依頼してください。

まとめ

お墓不足や多様な供養のニーズに応えるため、納骨堂の建設を検討する宗教法人が増えています。しかし、納骨堂の経営には墓地埋葬法に基づく許可が不可欠であり、無許可での経営は厳しい罰則の対象となります。

納骨堂の許可申請は、多くの場合、都道府県知事から権限委譲された市長が管轄し、その要件は地域によって大きく異なります。 特に、近隣住民や土地所有者の同意など、地域ごとの独自ルールが存在するため、事前の市役所担当部署への相談が極めて重要です。また、申請にあたっては、宗教法人内部での意思決定、需要調査、そして建設業者や仏具店との連携が求められます。

申請書類は多岐にわたり、地域差があるものの、法人情報、事業計画、図面、管理規則、収支計画、近隣同意書などが一般的に必要です。重要なのは、これらの書類を提出し、許可が下りてから初めて工事に着手できるという点です。許可を待たずに工事を始めると、大きな問題に発展する可能性があります。

納骨堂の建設は、多額の費用を要するだけでなく、周辺住民との関係や、将来的な経営責任にも深く関わります。そのため、単に許可申請の手続き代行業者を選ぶのではなく、宗教法人の事情に精通した行政書士や弁護士に相談し、コンプライアンスを遵守しながら慎重に進めることが、安定した納骨堂経営の鍵となるでしょう。

お寺の運営上必要な
手続きをサポート!

お気軽にお問い合わせください

電話でのお問い合わせ

078-779-1619

お問い合わせ