お墓を建てる方は徐々に減少しており、今では納骨堂や樹木葬や海洋散骨などを希望する方が増えてきており、埋葬の仕方は時代とともに変化しております。そして、既にお墓を有している方も墓じまいを行い、合葬墓に埋葬するという改葬手続きが近年増加しています。そのような経緯から弊所にも寺院の方から合葬墓を新たに作りたいというご相談が多く寄せられています。
新たに合葬墓を建てて運営する場合、合葬墓経営許可申請もしくは合葬墓経営変更許可申請が必要となります。この記事ではこれらの許可申請の手続きについて解説させていただきます。許可を得ずに合葬墓の運営を開始した場合は罰則の対象になりますのでご注意ください。
目次
合葬墓と合祀墓の違い
「合葬墓」と「合祀墓」に似たような言葉ですが、埋葬の仕方で大きく異なります。ご住職の中にも混合して使用されている方もおられますのでここで再確認しておきます。「合葬」とは遺骨の入った骨壺を他人の骨壺と同じスペースに安置することで、「合祀」は骨壺から遺骨を取り出し他の遺骨と一緒に埋葬します。つまり、「合祀」にすると、他の遺骨と混ぜて埋葬することになるので後戻りできなくなります。そのため、運用という意味では大きく異なってきますので注意が必要です。例えば、「合祀墓」を新設したのに「合葬墓」と勘違いした方からお申込みを受けた場合、あとで大きなトラブルになる可能性があるからです。ただ、「合葬」も「合祀」も許可という面では同じ意味合いになりますので本記事では「合葬墓」で統一して記載いたします。特に記載がない場合は、「合葬墓」は「合祀墓」を含んだ意味としてご理解ください。
合葬墓の許可と墓地の許可は異なるのか
合葬と合祀の意味が違うのと同じく個別の墓と合葬・合祀も意味は異なります。個別の墓は「〇〇家の墓」というように他人と同じスぺ―スに収まることはありません。ただ、合葬墓・合祀墓と同じように、合葬墓と個別の墓も墓の種類が異なるだけで、許可という面では同じです。そのため、墓地の許可と合葬墓の許可も基本的には同じ基準が求められるとお考えください。
誰が許可をするのか
合葬墓を経営する者は都道府県知事の許可が必要(墓地埋葬法10条)となります。しかし、多くの自治体では知事から権限が委譲されて市町村長が許可をすることになっています。なぜ知事ではなく市町村長なのかというと墓地に関する環境は自治体によって大きく異なるため、許可をする者を都道府県単位ではなく市町村単位にまかせる方がより適切な判断をすることができるからです。合葬墓の許可についての役所の窓口は所在地を管轄する市町村役場とお考えください。
合葬墓の「経営許可」と「経営変更許可」の違い
冒頭で、合葬墓の運営を始めるには合葬墓の経営許可もしくは経営変更許可が必要と記載しました。先ほども書きましたが、墓地も合葬墓も許可という観点からは同じ意味合いになります。そのため、既に墓地の許可を得ている場合は、許可を受けている内容を変更(合葬墓を追加)することになるので経営「変更」許可となります。しかし、墓地の許可を得ていない場合は、新規で許可を取るということになるので新規での「経営許可」となります。
許可ではなく届出で済む場合とは
墓地の許可を受けている場合に合葬墓を追加で建てる場合は墓地経営変更許可が必要と書きましたが、墓地としての区域を広げることなく墓所を増やす場合は、許可ではなく届出で足りることがあります。
墓地とはお墓を建てるために整備された区画のことで、墓所とは墓地内にある個々のお墓の区画のことです。墓地区画の面積を変更することなく(拡張することなく)、今ある区画の空いているスペースに合葬墓を新たに設置する場合が届出足りるという意味です。これは、合葬墓であろうが個人墓であろうが、墓石の数が1基増えるだけなので許可ではなく届出で足りることになります。しかし、墓地エリアを拡大する場合は、これまで墓地のなかったところに新たに墓地ができるため周辺住民への住環境への影響を考慮する必要がでてきます。そのため許可制がとられています。もちろん、届出だから用意にできるというわけではありません。そもそもの許可基準を超えるような変更は認められません。例えば、墓地許可基準として、お檀家様の数を超える墓所の数は認めない自治体もあります。また、墓地の許可基準として周辺から墓石が見えるかという視認性を基準に定めている自治体もあります。そのような場合に、大きな合葬墓を建立することは認められない可能性があります。あくまで、既に取得している「許可の範囲内」での変更と考えれるときに「届出」で足りるということになります。
合葬墓の許可手続きの流れ
合葬墓の許可手続きについては、他の記事にも書いていますが、墓地の許可や納骨堂の許可のように各自治体によって要件が異なってきます。ここは、だいたいこのような流れで手続きが進んでいく自治体が多いという理解でお読みください。なお、各寺院の規則に、合葬墓を設置するために境内地内を工事する場合には、工事することについての責任役員会の議決や総代等の同意・公告・宗派の承認などの手続きが必要と定められている場合があります。合葬墓の運営を開始することについての責任役員会の議決も必要ですが、工事することについても各機関の議決が必要になる場合がありますので、そちらも忘れずに手続きを行ってください。
(1) 事前協議
ア 許可申請書を提出する前に役所との事前協議を行っておく必要があります。許可申請書を提出する事前協議とは、いったいいつ前までにという疑問が出てくると思いますが、許可申請の4~6か月程度前には事前協議の入っておいた方が良いとお考えください。ここも、自治体によって異なりますので必ず各自治体に確認する必要がありますし、基本的には事前協議はどの自治体でも必要だとお考えください。
イ 事前協議に必要な書類
事前協議とありますが、許可申請に必要な書類はほとんどこの段階で用意する必要があります。自治体によって許可要件が異なるため、必要書類も異なりますがあくまで一例として以下に挙げておきます(詳細は各自治体にご確認ください)。
・事前協議申請書(記載項目は各自治体による)
・法人の登記簿、印鑑証明書
・責任役員会議事録、その他寺院規則に定められた手続き
・設置予定場所の周辺地図、不動産登記簿、公図、測量図
・完成予定墓の概要図・平面図・設備に関する図面・内容等
・利用希望者名簿
・収支計算表
・近隣住民の同意書、事前説明会の開催
・変更許可の場合は変更前と変更後の図面
・合葬墓の管理規約など
(2) 標識の設置
標識の設置は自治体によっては求められないこともあります。その場合は自治会長の同意や周辺住民の同意が求められることが多いです。標識の設置が必要な場合は標識の図を作成してそれを看板として作成してくれる業者を探す必要があります。標識を設置している様子は写真にして自治体に提出することになります。
標識の設置期間は自治体によって異なりますが、1か月程度は必要だと想定しておいてください。設置後も問い合わせ期間を置く必要がありますので、その期間もあらかじめ考慮しておく必要があります。例えば、兵庫県尼崎市では、必要とされる標識のサイズが大きいためお寺の掲示場のケース内に貼ることが難しい場合があります。また、お問合せ期間を設ける必要があります。一方で自治会長や周辺住民の同意までは求められません。大阪市では、標識がA3サイズなのでお寺の掲示場に掲示すれば良いのですが、自治会町への事前説明が必要になっています。このように自治体によって許可の要件が異なってきます。また、標識の設置期間に、何回か自治体の担当者の方が現地確認されるケースがあります。どうしても設置期間中に取り外す必要が出た場合は、自治体に確認して設置期間の変更などを事前に協議しておくことをおすすめします。
(3) 許可申請
標識設置後に合葬墓に設置について問い合わせがあった場合はその方との協議結果を残すことになります。問題なければ、協議結果の報告書と許可申請書を提出します。。
(4) 工事に着手
許可申請をしたのち、自治体と事前に定めた工事期間に沿って工事に着手します。
(5) 許可証の交付
工事が完了すると工事完了報告書を提出して自治体の担当者が現地確認にこられます。現地確認を行い、申請した内容と相違がないか確認されたあと問題なければ、許可証が交付されます。
(6)募集の開始・契約の締結
合葬墓の新設は、お檀家様などからの要望があるから着手を進める決意をされたことと思います。許可申請の期間中も同じくお問合せがあるかと思いますし、新しく始めるのであれば新規の希望者も募りたいところだと思います。合葬墓の申し込みを受けての契約は、許可が出てから行ってください。募集については許可がでる前の段階で、自治体の担当者が「募集を始めてもいいですよ」と仰ってくれる場合があります。それ以外の場合は、許可が出るまで募集は控えておいてください。お問合せに対して「許可申請中です」とお答えすることは問題ありません。
合葬墓経営許可申請についての注意点
以上が合葬墓の許可申請(変更許可)の手続きの概要となります。基本的には墓地の許可と同じですので揃える書類も多いし、近隣住民との調和の問題もあり審査期間も長くなります。許可申請の審査項目として近隣に学校や病院があると許可をしないと定めているケースもあります。そのような場合でも、合葬墓を設置する状況や内容次第で許可を出すことができたケースもあります。また、合葬墓ではなく合祀墓の場合は他の遺骨と混ぜるため一度混ぜてしまうと元に戻せないことになります。そのため申込利用者からの返還請求があった場合に備えて事前説明と管理規約をしっかりと定めておくことも重要となります。
まとめ
今は墓石を建てるというより、合葬墓にて永代供養を希望される方が年々高まりつつあるように感じています。また、お墓の管理を負担に感じ自分の「子供にはお墓のことで悩んでほしくない」、「お墓を管理できる子供がいない」、「いても遠方でお墓の管理ができない」などの事情から墓じまいをして合葬墓へと改葬するケースが多いように感じます。合葬墓がないお寺では信者さんから合葬墓のことでお問合せを受けた方も多いのでないでしょうか。宗派本山が運営する合葬墓に納骨することで対応されているご住職も多くおられると思いますが、信者さんの中にはお世話になったご住職やお寺での納骨を希望されている方も多いと思います。合葬墓の建設をお考えの方で、許可申請でお悩みの方は弊所までお問合せください。また、合葬墓以外でも墓地・納骨堂・樹木葬の経営許可や管理規約をきちんと整備したいとお考えの方、その他宗教法人の運営に関することでお悩みの方はお気軽に弊所までお問合せください。