墓地管理者の責任義務と範囲について解説!トラブル対策に有効な方法とは?

管理料は支払っているのに、お墓周りの清掃ができていないなどクレームがきたことはありませんか。また、お寺は山中にあることも多く、土砂災害など自然災害によってお墓が埋もれてしまった場合は、管理人に何か責任問題が生じるかなどを気にする住職もおられます。そこで墓地管理責任の義務と範囲について整理し、トラブル対策に備えておきましょう。

墓地管理者とは

墓地管理者とは、墓地の清掃、整備、設備管理や墓地利用に関する申込、改葬、墓じまいの許可を行う人のこといいます。寺院では住職が就任することが一般的です。墓地の経営許可を取得するときは管理者を置き、管理者の住所氏名を市町村に届け出る必要があります(墓地埋葬法第12条)、墓地の管理者に変更があった場合も市町村への届出が必要となっています。墓地管理者は後に述べる管理責任以外にも、埋葬許可証、架火葬許可証、改葬許可証を受理した日から5年間の保存義務があります(墓地埋葬法第16条)。管理者を置かなければ罰則の規定(墓地埋葬法第21条第1号)があるなど、墓地管理者を墓地を運営するうえで重要な役割を担っております。

管理料の支払い義務について

墓地には管理者がいて(墓地埋葬法12条)、区画の使用者(購入者)は、通常、一定額の管理料を支払います。具体的には、墓地管理規約等に管理者や管理料に関する定めがあり、管理者は墓地全体の管理義務を負い、墓地(区画)の使用者は、その規約等に従い管理料を支払う義務を負います。

墓地管理者の管理責任の範囲

管理料は、墓地使用の対価ではなく、墓地全体の管理のための対価であり、墓地の管理者が負う管理義務の範囲は、道路の清掃や案内板、休憩所等の共有使用スペースの設備補修など墓地全体の維持管理・保全といった社会通念上一般的に管理人に期待される範囲に留まります。

個別の墓・区画内の管理は使用者自身が行うべきことです。マンションにおける管理人が行う業務をイメージすればよいでしょう。

そのため、墓地内で起こった窃盗等の犯罪、事故、墓荒らしや、個々の区画内の清掃や除草、柵の補修等は管理人による管理義務の範囲外と考えるべきです。犯罪や墓荒らし等による被害は、基本的には、加害者への損害賠償請求や刑事上の責任追及で解決を図るべきことです。

但し、犯罪等が多発している状況においては、管理人は漫然とこれを放置するのではなく、注意書きの看板を立て、巡回をする等の対策は墓地全体の維持管理するうえで必要な業務の範囲内であるといえます。

また、個々の墓地形態や管理規約等の内容によりますが、管理料が一般の墓地に比べて多額である場合や、墓地の構造上部外者が出入りできない状況であるにも関わらず、入り口の施錠を忘れ侵入者によって墓が破壊された場合などは管理責任が問われる可能性があり、管理責任の範囲は個別の案件ごとに判断されることになります。

土砂災害などの自然災害の場合

土砂災害といった天災により墓が埋没した場合に、管理者側に管理責任があるかが問題になりますが、土砂災害といった天災による被害については、社会通念上一般的に管理者に期待される管理業務(責任)の範囲内とはいえません。

土砂災害警戒区域に指定されている場合、管理者は災害対策をとる義務があるように思えますが、災害対策には、莫大の費用と労力がかかるだけでなく、行政を含めた指定区域全体での対応が必要となるため、その対策を怠ったことから直ちに管理者に過失が認められ管理責任が生じるとはいえないでしょう。実際の例として、東日本大震災の時は、個人墓の修繕等は、ほぼ使用者の負担で行われたようです。

ただし、墓地利用契約締結の際に、土砂災害に関する質問を管理者に行い、管理者が土砂災害警戒区域に指定されているにもかかわらず、これを秘して契約を締結したという特別な事情等があれば、管理者に対し責任追及されることが十分考えられます。

又、大雨が続いて地盤が緩み、土砂災害が起きる蓋然性が高くなっている状態においては、管理者は速やかに、墓の所有者への連絡と安全確保措置等の対策は取るべきといえます。

トラブル対策には墓地管理規定の整備が必須

墓地を管理していると、ゴミや騒音の問題、違法駐車といった近隣トラブルなどが発生することもあります。また寺院墓地の場合は夜間に敷地内に出入りされると防犯上の観点からも望ましくないこともあるでしょう。

そういった方々は、最終的には墓地の使用権を解約させてもらうことになりますが、ただ単に口頭などで解約するのではなく、手続きをしっかり踏まえて解約することが重要です。

そういった手続きは、墓地管理規定に規定しておき、墓地使用申込の際に、管理規定に同意する署名を頂いておくことがトラブル対策に有効です。

墓地管理規定に書いてあれば何でも許されるわけではありませんが、何か違反があった場合は、規定の〇条の「○○○○」という文言に違反するといえることが望ましいといえます。その条項が合理的であり、条項に該当する事実があれば解約するときの明確な根拠となりますので、墓地管理規定に解約に関する記載がない場合は規定の見直しをおすすめします。

墓地管理規定はお寺の実情に合わせて作成しましょう

墓地や納骨堂の管理において、使用者からのクレームや自然災害への対応は、管理者が直面しうる重要な課題です。管理料が支払われているにも関わらず清掃が行き届いていないといった不満や、土砂災害時の責任の所在など、その範囲と義務を明確に理解しておくことは、トラブル対策の第一歩となります。

本記事で解説したように、墓地管理者の責任範囲は、墓地全体の維持管理・保全に限定されるのが一般的です。個別の墓区画内の清掃や補修、窃盗などの犯罪被害は、基本的に使用者の責任とされます。しかし、管理料の多寡や墓地の状況によっては、管理責任が問われる可能性もあります。

また、土砂災害のような自然災害については、通常、管理者に直接的な責任は生じませんが、災害警戒区域の指定を秘して契約を締結した場合など、特別な事情があれば責任が問われる可能性も出てきます。

これらのトラブルを未然に防ぎ、使用者との円滑な関係を築くためには、墓地管理規程の整備が不可欠です。管理規程に、管理責任の範囲、管理料の支払い義務、使用者の遵守義務、そしてトラブル発生時の手続きなどを明確に定めておくことで、将来的な紛争のリスクを大幅に軽減できます。

墓地使用申し込み時に規程への同意を得ておくことも、有効な対策となるでしょう。

ご住職に、「墓地管理規定は作成していますか」とお尋ねすると、多くは「作成している」もしくは「あったと思う」というような内容のお返事が多いです。何も規定がないようなところは少ないのかなという印象です。ただ、「このような規定は盛り込まれていますか?」とお尋ねすると、ほとんどのご住職は「盛り込んでいない」というお返事をなされます。

墓地管理者は法律上設置が義務付けられており、その運用についてはきちんと整備しておくことが求められます。管理規定の内容が不十分であるならば、この機会に一度見直されることおすすめいたします。

墓地管理規定はそれぞれお寺の事情に応じて書く内容が異なります。実務をしていくなかで、お寺さんが気になっているポイントはそれぞれ異なります。例えば、仏花にしても生花なのか造花なのか、お供え物は持ち帰るのかなど本当に千差万別です。また「他のお寺はここどうしているの」といったご質問もよく聞かれます。

これまで、多くの墓地管理規定をこれまで作成してきましたが、一つとして同じ内容の規定を作ったことはありません。

墓地管理規定の作成でお困りの方がおられましたら、弊所までお問合せください。

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